音楽理論の位置づけ

一言で音楽理論と言っても多岐に渡る。最初に結論だけ言っておくと、いわゆる音楽理論ではそんな詳細な曲の作り方まで取り扱わないし、取り扱えない。いい絵を描くのに美術理論や美術批評が何の役にも立たないように、いい曲を作るのに音楽理論や音楽批評は何の役にも立たないと言っても過言ではない。

音楽的な感性を磨くための時間を99%とするなら、音楽理論のために費やす時間は1%でいいと私は思う。しかし、この1%が0%であってはならないし、逆にここが10%を超えるようならばそれは配分に問題がある。

音楽理論俯瞰図

いまからの説明で、いくつかの概念がその意味の説明なしに出てくるが、これらについて詳しいことはこのWikiの別のページで書くのでいまの段階では説明しない。どの概念がどの概念に依存しているのか、その依存関係図を頭のなかで構築するのに役立てて欲しい。

まず、2つの音が与えられたときの音と音との距離を「音程」と呼ぶ。2つ以上の音をある音程ずつ離して堆積させたのが和音である。ポップスなどでは1小節ごとに1つの和音(chord)が当てられていて、その和音の進行のことを「コード進行」などと呼ぶ。

コード進行にはいくつかの法則がある。これを取り扱うのが和声学である。コード進行のための理論である。ただ、和声学で取り扱うコード進行の法則は極めて限定的であり、実際の楽曲ではこの法則では説明できないようなものも多数見受けられる。要するに、和声学は大したことは教えてくれない。

和音を構成する音一つ一つに注目して、その動きがどうあるほうが滑らかな進行が得られるかを考えるのが対位法である。対位法は和音からメロディラインを構築するときにどう動かせば自然であるかを教えてくれる。(ことがある)

和声学と対位法は16世紀ぐらいの音楽から徐々に発展してきたので多くの教科書があり、音楽理論のなかでもかなり奥深くまで研究されている分野だと言っても過言ではない。音楽理論から曲作りにおいて何らかの示唆が欲しいならば、真っ先に勉強すべきである。

次に、コード進行をアレンジすることを考える。具体的には、ある小節に割りつけられている和音を別の和音に変更することを基本とする。これは比較的法則に基づいて変更していくことが可能であり、このアレンジのことをリハーモナイゼーションと言う。俗に「リハモ」とか「コードアレンジ」などと呼ぶ。

ただ、「こう変えることが出来る」というカタログ一覧を得たところで、そう変えることの必然性、合理性みたいなものがわからないと何をしていることにもならなず、コードという広大な砂漠のなかで迷子になってしまうだろう。残念ながらこのへんは感性に委ねられていることであり、リハモの教科書は何も教えてくれない。(ことが多い)

例えば、美術で「絵の具で肌の色を作るのに、白とオレンジと茶色が使える」というヒントだけで適切な肌色が作れるだろうか。混ぜ具合には無限の可能性があるから、結局は自分の感性に委ねられることになる。

この意味において「音楽理論さえ覚えれば、コード進行で悩まなくて済む」と思っているならそれは大きな誤解であり、いわゆる音楽理論はそんなことまで何も教えてくれず、音楽理論を勉強すればコード進行の勉強は「終わり」ではなく、むしろ「始まり」である。音楽理論を勉強したあと、我々の音楽的体験が始まるのである。

そういう意味では、音楽理論に過度の期待を抱いていた場合、日々、がっかりさせられ続け、失意の連続となるだろう。

次に、ある和音にマッチする音とマッチしない音とがある。そこで、ある和音が与えられたときにマッチする音だけを選ぶと、スケールが出来上がる。例えばCM7にマッチするスケールとしてC major scaleかC lydian scaleが挙げられる。

このスケール音を使ってメロディを構築すると和音のサウンドを損ねないメロディが作れて便利である。そこで、和音に対応するスケールというのを常に考える必要がある。和音からそれに対応するスケールを決定するための方法論が必要となる。

それから、major scaleから5つの音を抽出したスケールをpentatonic scaleと呼ぶ。C major scale = ドレミファソラシ に対して、C major pentatonic scale = ドレミソラ である。俗に言うヨナ(四七)抜き音階である。このヨナ抜き音階は、major scaleの性質を受け継いでおり、半音になっているところもないので、適当に演奏してもおかしなサウンドにはなりにくい。そこでメロディラインの構築にpentatonic scaleを活用していくわけである。

実際は、pentatonic scaleだけで1曲まるごと構築してしまうと単調な曲になってしまいがちなので、2小節をpentatonic scale由来のメロディ、次の2小節をmajor scale由来のメロディ、次の2小節を最初の2小節とは違う調のpentatonic scale由来のメロディ、というようにこっそり変えていきながら変化を持たせるわけであるが。

このため、ある和音が与えられたときに、そこに適合する(和音のサウンドを損ねない)pentatonic scaleをどうやって選ぶかという方法論が必要である。これは、和音に対して、和音に対応するスケールを持ってきて、そのスケールに内包されるpentatonic scaleであるならば、和音のサウンドを損ねないという考え方をして、和音に対応するpentatonic scaleを決定していく。一部例外はあるが、基本的な方針はそういうものである。

このとき、複数のpentatonic scaleが選択できることがある。うまく選択することで、和音が次々に変わっても同じ調のpentatonic scaleを使い続けることが出来る場合もある。このへんは腕の見せどころである。感性に委ねられる部分でもあるので、理論らしき理論はないし、説明してある本もない。

メロディを構築していくときに、こういうメロディの作りにしたほうが人の心に響きやすいというのは「旋律法」などと呼ばれる分野になるが(「作曲入門」などと書いてある本にもこの手の話が書いてある)、心の問題であるから、理論らしき理論を構築するのは不可能で、その手の本は「こうよりはこうのほうがいいんじゃね?」ぐらいの話が延々と書いてあるわけである。無論、作曲初心者にとっては非常に参考になるとは思うのでいくつかの書籍を当たってみられることをお勧めする。

ざっと駆け足で見てきたが、よくある音楽理論書には書かれていないことがいくつかあるので私(やねうらお)の発見を交えながら、このWikiに書いていきたいと思う。

コメント欄

  • ものすごいわかりやすかったです。 -- 2014-11-15 (土) 22:22:08


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Last-modified: 2014-12-21 (日) 12:33:44 (1792d)